Excelでデータを検索・抽出する際、これまで多くの方がVLOOKUPやHLOOKUPを使ってきたのではないでしょうか。しかし、Excel 365やExcel 2021以降では、これらの関数をさらに進化させた「XLOOKUP(エックスルックアップ)」が登場しました。XLOOKUPは、従来の検索関数の弱点を解消し、より柔軟で直感的なデータ検索を可能にします。本記事では、XLOOKUPの基本から応用まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。
XLOOKUPの基本構文と引数の意味
まずは、XLOOKUPの基本的な書き方と、各引数の意味を押さえましょう。
=XLOOKUP(検索値, 検索範囲, 戻り値範囲, [見つからない場合], [一致モード], [検索モード])
主な引数の解説
- 検索値
探したい値を指定します。たとえば「りんご」や「1001」など。 - 検索範囲
検索値を探す範囲(列や行)を指定します。A列全体なら「A:A」など。 - 戻り値範囲
検索値が見つかったときに返す値の範囲を指定します。B列全体なら「B:B」など。 - [見つからない場合](省略可)
検索値が見つからなかった場合に返す値を指定できます。省略するとエラー(#N/A)になります。 - [一致モード](省略可)
完全一致や近似一致など、検索の一致条件を指定します。 - 0:完全一致(既定値)
- -1:完全一致または次に小さい値
- 1:完全一致または次に大きい値
- 2:ワイルドカード一致
- [検索モード](省略可)
検索の方向や方法を指定します。 - 1:上から下に検索(既定値)
- -1:下から上に検索
- 2:バイナリ検索(昇順)
- -2:バイナリ検索(降順)
XLOOKUPの主なメリット
XLOOKUPは、従来のVLOOKUPやHLOOKUPと比べて、以下のような大きなメリットがあります。
左方向への検索が可能
VLOOKUPは「検索範囲の左端列」でしか検索できず、戻り値は右側の列からしか取得できませんでした。XLOOKUPなら、検索範囲と戻り値範囲を自由に指定できるため、左方向への検索も簡単です。
検索方向を柔軟に指定できる
検索モードを使えば、通常の上から下だけでなく、下から上への検索も可能です。これにより、最新データや最後に入力されたデータを優先して検索することもできます。
エラー時の返り値を指定できる
検索値が見つからなかった場合に返す値を自由に設定できるため、エラー表示(#N/A)を避けて、より見やすい表を作成できます。
列順や範囲の制約がない
VLOOKUPでは「検索範囲の左端列」からしか検索できませんでしたが、XLOOKUPは検索範囲と戻り値範囲を個別に指定できるため、列の順番に縛られません。
複数条件の検索も工夫次第で可能
XLOOKUP単体では複数条件検索はできませんが、工夫次第で複数条件にも対応できます(詳細は後述)。
XLOOKUPの基本的な使い方
ここからは、実際の使い方を具体的な例で見ていきましょう。
例1:基本的な検索
A列に「商品名」、B列に「価格」が入力されているとします。「りんご」の価格を調べたい場合は、次のように入力します。
=XLOOKUP("りんご", A:A, B:B, "見つかりません")
この式では、「A列から『りんご』を探し、見つかったらB列の同じ行の価格を返す。見つからなければ『見つかりません』と表示する」という意味になります。
例2:下から上に検索したい場合
たとえば、同じ商品名が複数回登場し、最新の価格(下の行)を取得したい場合は、検索モードを「-1」に設定します。
=XLOOKUP("りんご", A:A, B:B, "見つかりません", 0, -1)
このように、検索モードを指定することで、下から上への検索が可能です。
XLOOKUPの応用例
XLOOKUPは、基本的な使い方だけでなく、さまざまな応用が可能です。ここでは、よく使われる応用例をいくつか紹介します。
例3:ワイルドカードを使った部分一致検索
「りんご」という文字を含む商品名を検索したい場合は、一致モードを「2」に設定し、ワイルドカード(*や?)を使います。
=XLOOKUP("*りんご*", A:A, B:B, "見つかりません", 2)
この式では、「A列の中で『りんご』を含む商品名」を検索し、該当するB列の価格を返します。
例4:複数条件での検索(工夫が必要)
XLOOKUP単体では複数条件検索はできませんが、ヘルパー列(補助列)を使うことで対応できます。たとえば、「商品名」と「店舗名」の両方が一致するデータを検索したい場合、C列に「=A2&B2」のように結合した値を作り、XLOOKUPで検索します。
=XLOOKUP("りんごA店", C:C, D:D, "見つかりません")
この方法なら、複数条件での検索も実現できます。
XLOOKUPとVLOOKUP・HLOOKUPの違い
XLOOKUPは、従来のVLOOKUPやHLOOKUPの上位互換ともいえる機能を持っています。ここで、主な違いを表にまとめます。
機能 | VLOOKUP/HLOOKUP | XLOOKUP |
---|---|---|
左方向検索 | × | ○ |
検索方向の指定 | × | ○(上下・左右) |
エラー時の返り値 | × | ○ |
列順の制約 | あり | なし |
複数条件検索 | ×(工夫必要) | △(工夫必要) |
ワイルドカード検索 | △(一部可能) | ○ |
バイナリ検索 | × | ○ |
XLOOKUPの注意点とよくあるエラー
XLOOKUPは非常に便利ですが、いくつか注意点もあります。
利用できるExcelのバージョン
XLOOKUPは、Excel 365およびExcel 2021以降で利用可能です。Excel 2019やそれ以前のバージョンでは使えません。
検索範囲と戻り値範囲のサイズを揃える
検索範囲と戻り値範囲のサイズ(行数や列数)は必ず一致させてください。不一致の場合、#VALUE!エラーが発生します。
検索値が見つからない場合
「[見つからない場合]」を省略すると、#N/Aエラーが返ります。エラーを避けたい場合は、必ず値を指定しましょう。
XLOOKUPの活用アイデア
XLOOKUPは、日常業務のさまざまな場面で活用できます。たとえば:
- 顧客リストから特定の顧客情報を抽出
- 商品コードから商品名や価格を検索
- 売上データから最新の取引情報を取得
- 複数の条件でデータを絞り込む
このように、XLOOKUPを使いこなすことで、Excel作業の効率が大幅にアップします。
まとめ
XLOOKUPは、従来のVLOOKUPやHLOOKUPの弱点を解消し、より柔軟で直感的なデータ検索を実現する新しい関数です。左方向検索や下から上への検索、エラー時の返り値指定など、さまざまなメリットがあります。Excel 365やExcel 2021以降をお使いの方は、ぜひXLOOKUPを活用してみてください。
もし具体的な使い方や応用例についてご質問があれば、お気軽にご相談ください。あなたの業務に合わせた最適な活用方法をご提案します。
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