海外へ荷物を送るとき、「航空便は速いけれど料金が高い」「船便は安いけれど到着が遅すぎる」と悩む人は多いものです。そうしたニーズに応えるように提供されていたのが SAL(エコノミー航空便) というサービスです。現在は日本郵便での引受が停止されていますが、「そもそもどんなサービスだったのか」「どんな特徴があったのか」を理解しておくことで、今後の発送方法を選ぶ際にも役立ちます。この記事では、SALの仕組みやメリット・デメリット、かつての利用シーン、そして現在の状況までをわかりやすく解説します。
SAL(エコノミー航空便)とは?
SALとは Surface Air Lifted の略で、「陸送で集めた荷物を航空機でまとめて運ぶ」という意味を持つ国際郵便サービスです。
名前のとおり、航空輸送の要素を取り入れつつも、航空便ほど高頻度で便を確保しないことで、料金を抑えていました。
SALの位置づけ
国際郵便には主に次の3つの発送方法があります。
- 航空便(Air):最も速いが料金が高め
- SAL(エコノミー航空便):航空便と船便の中間
- 船便(Surface):料金は安いが到着が遅い
この中でSALは、「速さと料金のバランスをとる」中間的な選択肢として人気がありました。
SALの基本的な仕組み
SALは、航空輸送と陸送の両方を組み合わせた独特の仕組みを採用しています。
- 日本国内で集められた荷物を陸送で国際交換局へ輸送
- SALとしてまとめられ、空き状況に応じて航空機へ搭載
- 名あて国へ到着後、その国の郵便ネットワークで配達
航空便のように「毎便必ず載る」わけではないため、搭載までにタイムラグが生じることがありましたが、船便よりは確実に早く届けられました。
SALで送れる代表的な郵便物
かつてSAL便で発送できた郵便物には次のような種類がありました。
- 小形包装物(2kgまでの小さな荷物)
- 印刷物(書籍、冊子、カタログ、資料など)
- 国際小包
- 軽量のギフトや雑貨
- 同人誌・ファンアートの海外発送
特に「軽量で、そこまで急ぎではない荷物」と相性が良く、個人利用・ビジネス利用ともに広く使われていました。
SALのメリット
1. 航空便より料金が安い
航空便はスピードが最大の強みですが、そのぶん料金が高め。
SALは航空便より価格が抑えられており、旅行客・留学生・個人輸出などで重宝されていました。
2. 船便より大幅に速い
船便は到着まで1か月以上かかるケースも珍しくありません。
一方SALは、アジア圏であれば1〜2週間、欧米でも2〜3週間程度で到着することが多く、船便よりも実用的なスピードを実現していました。
3. 軽めの荷物に特に向いていた
重量が2kg以内の荷物であれば航空便との価格差を大きく感じられ、コストパフォーマンスの高さが魅力でした。
SALのデメリット
1. 航空便ほど早くはない
航空便と比較すると、どうしても搭載待ち時間が生じることがあります。
「急ぎで確実に届けたい」という用途には向いていませんでした。
2. 利用できる国が限られていた
SALの取り扱いは全ての国で提供されていたわけではなく、国ごとに対応状況が異なっていました。
3. 追跡番号やオプションに制限がある
SALでは追跡サービスが付く場合もありましたが、航空便のようにすべての発送方法でフルオプションが利用できるわけではありませんでした。
4. 天候・航空事情の影響を受けやすい
航空機への積載頻度が少ないため、国際情勢や輸送ネットワークの混雑状況によって遅延が起きやすい側面がありました。
SALの配達日数の目安
SALの配達期間は以下のような目安とされていました。
| 地域 | おおよその到着日数 |
|---|---|
| アジア | 1〜2週間 |
| 北米・ヨーロッパ | 2〜3週間 |
| オセアニア | 2〜3週間 |
| 南米・アフリカ | 3週間以上かかることも |
航空便の3〜7日程度と比べると遅いですが、船便ほど長期にはならなかったため、「急ぎではないが早く届くに越したことはない」という人に選ばれていました。
SALはなぜ人気だったのか
● コストと時間のバランスが絶妙
とにかく「ちょうどいい」サービスで、ネットショップの個人オーナー、海外の友人へ贈り物を送りたい個人、留学生など幅広い層に支持されていました。
● 書籍・資料・小物の発送に強かった
軽くて比較的壊れにくい物と相性が良く、本・プリント・雑貨・衣類などとの相性が抜群でした。
● 国際小包より気軽に使えることも
SALの取り扱い対象は比較的広く、小形包装物などの小さな荷物が多かったため、手軽に利用できるというメリットがありました。
現在のSALの取り扱い状況
現在、日本郵便では SAL便の引受が停止されており、事実上利用できない状態 です。
航空貨物の輸送体制の変化、国際物流の需要増加、配送ネットワークの見直しなどの影響で、SAL便のように“中間的な輸送方式”の運用が難しくなったためだと考えられています。
そのため、現在荷物を海外に送る場合には、次の方法が主流です。
- 航空便(EMS・国際航空郵便):スピード重視
- 船便:重い荷物・コスト最優先
- 国際宅配業者(DHL・FedEx・UPSなど):追跡精度と安定性が高い
特に小さな荷物を早めに届けたい場合は航空便が基本となります。
今後SALは復活するのか?
郵便局の輸送網や航空貨物の需給バランスは時代とともに変化しており、状況が改善されれば将来再開される可能性もゼロではありません。
しかし現時点では具体的な再開時期などは公表されていないため、利用者としては「現行の発送方法を使う」という前提で計画する必要があります。
SALが使えない現在はどう発送すべき?
SALの代替として、現在の発送方法を選ぶ際の基準をまとめておきます。
● 早く届けたい
→ 航空便(EMS推奨)
到着日数が安定しており、追跡も正確。
● 安さを最優先したい
→ 船便
急ぎでなければ最も安い方法。大量の荷物向き。
● 安心して確実に届けたい
→ 民間の国際配送サービス
料金は高くても、配達スピード・追跡・補償などの面で安心感が大きい。
荷物の内容、予算、希望日数を踏まえて最適な配送方法を選ぶことが大切です。
まとめ
SAL(エコノミー航空便)は、かつて多くの利用者に愛された国際郵便サービスでした。
その人気の理由は「航空便より安く、船便より早い」という絶妙なバランスにあり、軽量の荷物を海外へ送る場面で非常に重宝されていました。
しかし現在では引受が停止されており、利用できない状態です。
そのため海外発送を検討する場合は、航空便・船便・国際宅配サービスなどを比較し、目的に応じて最適な方法を選ぶことが重要になります。
SALというサービスの特徴を知っておくことで、今後の発送選びにも役立つはずです。
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