「矯める(ためる)」という言葉は、日常会話ではあまり見慣れないものの、文章や慣用句の中では案外よく見かけます。しかし、漢字の印象から「直す? ためる? どういう意味?」と少し迷うこともありますよね。
この記事では、「矯める」という言葉の意味、使い方、関連する慣用句、類義語との違いまで、できるだけわかりやすく丁寧に解説します。日本語の語感やニュアンスを深く知りたい方、文章力を高めたい方にも役立つ内容です。
矯めるの基本的な意味
「矯める(ためる)」は、主に次のような意味で使われます。
● ① 曲がったものをまっすぐに直す
物理的に“曲がっているものを矯正する”という意味です。
例:
- 曲がってしまった針金を矯める
- 背筋を矯める
● ② 欠点や誤りを正す
性質や行いなど、目に見えないものを正しくする場合にも使われます。
例:
- 人の性癖を矯める
- 誤った考え方を矯める
この②の意味は、教育的・文章的な文脈でよく使われます。
● ③ 故意に様子を変えて見せる(慣用句としての用法)
後述する「矯めつ眇めつ」など、慣用句の中で特別な意味に転じる場合があります。
「矯める」の語源と漢字の成り立ち
「矯」は、
- まっすぐにする
- 正す
といった意味を持つ漢字です。「矯正(きょうせい)」という熟語に見られるように、曲がったものを直すニュアンスが強い文字です。
そのため「矯める」は、何かの歪み・偏りを正しい方向へ調整する行為全般に使われる言葉です。
「矯める」の使い方と例文
もう少し具体的に、日常の文章やビジネス文でも使える例を紹介します。
● 物理的な“形”を直す例
- しなってしまった木材を矯めて、再び使えるようにする。
- 背中が丸くなっているので、姿勢を矯めるよう意識する。
● 行動や考え方を正す例
- 彼は不規則な生活習慣を矯めるために、早寝早起きを始めた。
- 子どもの癖を無理に矯めるのではなく、成長に合わせて見守ることも大切だ。
● 人格・癖などの“目に見えないもの”を正す例
- 彼の怒りっぽい性格を矯めるのは難しい。
- 文章の癖を矯めると、より読みやすい文になる。
文章表現としては比較的硬めで、文語的な響きがあります。ビジネス場面や論文などでも使いやすい表現です。
「矯める」を使った慣用句
「矯める」は慣用句の中で独自の意味合いを持つことがあります。ここでは代表的なものを紹介します。
● 矯めつ眇めつ(ためつすがめつ)
意味:
あちらこちらの角度から、じっくり観察したり吟味したりする様子。
由来:
「矯める(ためる)」=目を細めたり横目で見る
「眇める(すがめる)」=片目を細めて見る
という動作を重ねることで、「細かく見る」という意味になったと言われています。
例文:
- 商品を矯めつ眇めつして、品質を確かめる。
- 彼は作品を矯めつ眇めつしながら、細部までこだわりを確認していた。
これは「矯める」が視線の動きを表す昔の意味として残っているパターンです。日常会話というよりは文章向けの表現です。
● 矯め縄(ためなわ)
意味:
物差しの代わりに使った、まっすぐに伸ばした縄のこと。建築や大工の仕事で用いられた古い道具です。
用例:
- 古い建築現場では矯め縄を使って水平を測った。
現代ではほとんど使われない表現ですが、歴史的な文脈や職人文化の説明などで見かけることがあります。
● 矯め直す
意味:
誤りや癖を直し、より良い状態に整えること。
例文:
- 一度のミスで落ち込んだが、気持ちを矯め直して練習に取り組んだ。
- 文章を矯め直して、読みやすさを改善した。
「矯める」と似た言葉との違い
● 直す
最も一般的な表現で、「悪い部分を元の状態・良い状態へ戻す」こと全般。
ニュアンスは広く、カジュアル。
● 正す
道徳的・社会的に“正しい”方向へ向ける意味合いが強い。
例:誤りを正す、姿勢を正す
● 改める
改善・変更のニュアンスが強い。「変える」ことに重点。
例:考え方を改める、態度を改める
● 矯める
“曲がったものをまっすぐにする”という比喩性が強い。硬めの表現。
「矯める」が使われやすいシーン
- 文学作品・評論文・新聞の論説
- ビジネス文で「癖・方向性を整える」ニュアンスを出したいとき
- 硬めで落ち着いた文章にしたいとき
- ものごとの“歪み”や“偏り”を直すイメージを強調したい場面
自然な日常会話で使うことは少ないものの、文章で使うと語彙力が高く見える言葉です。
「矯める」を使った例文(追加)
文章表現の幅が広がるよう、バリエーション豊かにまとめました。
- 彼の語尾に現れる独特の癖を矯めるため、丁寧な話し方を練習した。
- 研究者はデータの偏りを矯めるべく、サンプル数の調整を行った。
- 自身の思い込みを矯めることで、新しい視点が開けることがある。
- 古い建具を矯めて再利用するのも、伝統的な職人技のひとつだ。
- 心の乱れを矯めるため、深呼吸をして気持ちを整えた。
矯めるは「曲がったものを正す」イメージの言葉
「矯める」の根底には、**“歪みを正して整える”**というイメージがあります。物理的な形だけでなく、行動、考え方、習慣など抽象的な対象にも使える奥深い言葉です。
また、「矯めつ眇めつ」のように昔から残っている慣用句もあり、日本語の豊かな表現を知るうえでも覚えておくと便利です。
文章表現を豊かにしたいときにも役立つので、ぜひ使いどころを意識してみてください。

コメント