照明や植物育成ライトを選ぶとき、「カンデラ」「ルーメン」「ルクス」「PPFD」など、似ているようで実は意味の異なる単位が登場します。これらはすべて“光の量”に関わる指標ですが、測っている内容はまったく違います。そのため、それぞれを正しく理解しておかないと、目的に合ったライトを選べなかったり、明るさの比較がうまくできなかったりします。
この記事では、光の基本的な単位であるカンデラ(cd)、ルーメン(lm)、ルクス(lx)、そして植物育成で重要なPPFDを、初心者にもわかりやすい言葉で丁寧に解説します。日常生活で使う照明の選び方から植物育成まで、幅広く役立つ知識としてまとめました。
光の単位が複数ある理由
光に関する単位が複数存在する理由は、光には「方向性」「光源の明るさ」「照らされた面の明るさ」「植物の光合成に必要な光」など、用途によって測りたいポイントが違うためです。
たとえば、懐中電灯の“光がどれだけ遠くまで届くか”を知りたいときと、室内照明で“部屋全体がどれくらい明るくなるか”を知りたいときでは、必要な情報が異なります。また、植物育成では、人間の目で感じる明るさとは別の指標が重要です。
そのため、光の世界では複数の単位が使われています。それぞれが何を表し、どのように使い分けるべきかを理解しておくと、照明選びが格段にスムーズになります。
カンデラ(cd)とは:光の「向き」に関係する単位
カンデラ(cd)は、光の強さの“方向性”を示す単位で、「光度」と呼ばれます。
カンデラの特徴
- ある特定の方向へ放射される光の強さを表す
- 懐中電灯やスポットライトの性能比較に向いている
- 人間の目の感度に基づいている
カンデラは「光源がとある方向に向かって、どれだけ強い光を出しているか」を測定するための指標です。たとえば、同じルーメン数のライトでも、光が広がるタイプと集中するタイプでは、カンデラ値が大きく変わります。
例でイメージしやすくすると
- 懐中電灯のように光が狭い範囲に集中する → カンデラ値が高くなる
- 部屋全体を照らすように光が広く拡散する → カンデラ値は低くなる
つまり、カンデラは“光の強さ × 光の方向性”を知るための単位と言えます。
ルーメン(lm)とは:光源が出す光の「総量」
ルーメン(lm)は、光源が出す光の“総量”を示す単位で「光束」と呼ばれます。
ルーメンの特徴
- 光源が出している光の全体量を示す
- 電球の明るさ比較に最適な指標
- 光の広がり方には影響されない
現在、家庭向け照明の明るさはワット(W)ではなくルーメンで表記されていることが一般的です。ワットは“電力消費量”を示すだけで実際の明るさとは関係が薄いため、ルーメンでの比較が主流になりました。
例でイメージすると
- 1000lm の電球 → 光の総量が多い
- 300lm の電球 → 光の総量が少ない
ただし、ルーメンが同じでも光の広がり方(配光)が違うと、体感する明るさは大きく変わります。
ルクス(lx)とは:照らされた場所の「明るさ」
ルクス(lx)は「照度」と呼ばれ、“照らされた面がどれだけ明るくなっているか”を表す単位です。
ルクスの特徴
- 光が当たった面の明るさを測定する
- 人が明るさを評価する上で最もわかりやすい指標
- 光源の性能(ルーメン)と距離、角度などの影響を受ける
ルクスは光源の明るさではなく、「その光が届いた場所の明るさ」を測っています。たとえば同じルーメンのライトでも、距離が遠いとルクスは小さくなります。
日常生活のルクス目安
| シーン | 必要照度(lx) |
|---|---|
| 読書・勉強 | 300〜500 lx |
| 台所の作業台 | 500〜750 lx |
| 居間(リビング) | 100〜300 lx |
| 廊下 | 30〜75 lx |
| 夜の街灯周辺 | 5〜20 lx |
ルクスは日常生活の“体感的な明るさ”に直結しているため、住宅照明やオフィス照明の設計で最もよく使われます。
PPFDとは:植物育成に必須の「光合成に使える光量」
PPFD(Photosynthetic Photon Flux Density:光合成光量子束密度)は、植物用ライト選びで最も重要な指標です。
PPFDの特徴
- 1秒間に、1㎡の面に届く光合成有効光子の数
- 単位:μmol/m²/s
- 植物が実際に光合成に使える“光の量”を示す
- 人の明るさの感じ方とは関係ない
植物は人間とはまったく異なる仕組みで光を利用しているため、ルーメンやルクスではなく、PPFDで強さを評価します。
PPFDの目安(植物別)
| 植物の種類 | 推奨PPFD(μmol/m²/s) |
|---|---|
| 観葉植物 | 50〜200 |
| 多肉植物 | 150〜300 |
| ハーブ類 | 200〜600 |
| 野菜育成(レタスなど) | 200〜600 |
| トマト・イチゴなど実もの | 400〜1000 |
PPFDは距離の影響を強く受けるため、「光源から何cmの距離で測定したのか」が非常に重要です。
カンデラ・ルーメン・ルクスの関係を簡単にまとめると
光の単位が複雑に思えるときは、以下の関係性を押さえておくと理解が深まります。
- ルーメン(lm):光源が出す光の“総量”
- カンデラ(cd):特定方向に向けた光の“強さ”
- ルクス(lx):照らされた場所の“明るさ”
- PPFD:植物が光合成に使える“光子の量”
これらは目的によって使い分ける必要があります。
たとえば…
- 懐中電灯の性能評価 → カンデラ
- 部屋をどれだけ明るくしたいか → ルーメン & ルクス
- 植物育成 → PPFD
具体例:同じルーメンでも体感する明るさが違う理由
たとえば、同じ1000ルーメンのライトでも、光の広がり方が違うと次のような差が生まれます。
A:スポットライト(狭い配光)
- 光が一方向に集中
- カンデラが高くなる
- 照らされた場所(ルクス)が強くなる
B:シーリングライト(広い配光)
- 光が全体に広がる
- カンデラは低い
- ルクスは位置によって大きく変化
つまり、ルーメン値だけで照明の明るさを決めるのは適切ではなく、用途に応じてカンデラやルクス、さらには配光角も考慮する必要があります。
ライトを選ぶときのポイント
家庭用照明
- 基本は**ルーメン(lm)**で比較
- 部屋がどれくらい明るくなるかは**ルクス(lx)**で判断
- 配光角(光が広がる角度)もチェック
懐中電灯・自転車ライト
- 明るさの届く距離を重視 → カンデラ(cd)
植物育成ライト
- PPFDが最重要
- 次に光の波長域(PAR範囲 400〜700nm)をチェック
- 距離によるPPFDの変化も確認する
初心者がつまずきやすいポイント
ルーメンとルクスの混同
ルーメンは光源の“出力”で、ルクスは“結果”。
同じルーメンでも距離でルクスは変化するという点を理解しておくと混乱しません。
明るさの“体感”はルーメンだけでは決まらない
光が集中していれば少ないルーメンでも明るく感じます。
逆に広範囲に拡散すると多いルーメンでも暗く感じます。
植物用ライトでルーメン・ルクスを基準にしてしまう
これは初心者がよく犯すミスで、植物は人間と違い光の“明るさ”ではなく“光子(粒子)”を利用します。
そのため、植物育成はPPFDで評価する必要があります。
専門的だけど重要なポイント:単位の基礎原理
少し専門的ですが、理解すると光の理解がさらに深まります。
カンデラの定義
1cd = 特定方向に1ルーメンの光束を発する光源の光度
光度(cd)= 光束(lm) ÷ 立体角(sr)
立体角とは、空間に広がる“角度の広がり”のこと。
ルーメンの定義
光束(ルーメン)は、人間の目の感度に基づいて重み付けされた光の総量。
ルクスの定義
1lx = 1平方メートルの面に1ルーメンの光束が当たった状態
照度(lx)= 光束(lm) ÷ 面積(m²)
PPFDの定義
光子の数を数える。光の波長に関係なく、光子そのものを量で測定する。
このように、各単位はまったく異なる物理量を測っていることがわかります。
まとめ:光の単位は用途に応じて使い分ける
光の単位は複雑に感じられますが、それぞれ“大切にしている部分”が違います。
- カンデラ:光の方向の強さ
- ルーメン:光源が出す光の総量
- ルクス:照らされた場所の明るさ
- PPFD:植物が光合成に使える光子の量
これらの単位を目的に合わせて使い分けることで、理想的な照明環境や植物育成環境を作ることができます。

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