Power Automate Desktop(PAD)での自動化をより柔軟に設計するには、条件分岐の正しい理解と使い分けが不可欠です。
本記事では、特に重要な「If文」と「Switch文」の違いと使い分けのポイントについて、初心者にもわかりやすく解説します。業務の自動化をスムーズに進めるためにも、ぜひ参考にしてください。
条件分岐とは?
条件分岐とは、ある条件に応じて処理を変えるための仕組みです。プログラムやフローを作成する際、「Aならこうする」「Bならああする」といった判断ロジックを表現するために使用されます。
Power Automate Desktopでは、視覚的な操作で条件分岐を組み立てられるため、プログラミング未経験者でも直感的に使うことができます。
主に使われる分岐の手段は以下の2つです。
- If(条件分岐)アクション
- Switch(スイッチ)アクション
それぞれの特徴を理解することで、フロー設計がより明確かつ簡潔になります。
If文の特徴と使い方
If文の基本構造
If文は「指定した条件が真(True)か偽(False)か」に基づいて処理を分岐させます。もっとも基本的かつ汎用性の高い条件分岐です。
Power Automate Desktopでは以下のような構造になります。
- If: 条件を設定し、成立する場合に実行される処理を指定
- Else If(省略可能): 他の条件を追加したい場合に使用
- Else(省略可能): 上記の条件すべてが偽だった場合に実行される処理
例:If文を使った条件分岐
plaintextコピーする編集するIf [変数A] > 100
メッセージを表示「100より大きい」
Else If [変数A] = 100
メッセージを表示「100と等しい」
Else
メッセージを表示「100より小さい」
このように、If文は数値の大小比較や文字列の一致確認、論理条件の組み合わせなど、多様な状況に対応できます。
If文が向いているケース
- 比較する条件が数式や論理演算(AND/OR)を含む
- 変数の状態やフラグに応じて複雑な処理を分岐したい
- ネスト(入れ子構造)を使って細かく処理を制御したい
Switch文の特徴と使い方
Switch文の基本構造
Switch文は、「1つの変数がどの値であるか」に応じて、実行される処理を切り替えるために使います。
Power Automate DesktopのSwitchアクションには以下の構成があります。
- Switch: 分岐させる基準となる変数を設定
- Case: 各パターン(値)ごとの処理を指定
- Default Case: 上記以外のすべてに該当する場合の処理
例:Switch文を使った条件分岐
plaintextコピーする編集するSwitch [文字列変数]
Case "春"
メッセージを表示「季節は春です」
Case "夏"
メッセージを表示「季節は夏です」
Case "秋"
メッセージを表示「季節は秋です」
Case "冬"
メッセージを表示「季節は冬です」
Default Case
メッセージを表示「該当する季節がありません」
このように、ひとつの変数に対して値をパターン分けして処理する場面で便利です。
Switch文が向いているケース
- 特定の変数が取りうる値が限定されている(例:「はい」「いいえ」「不明」など)
- 分岐が数値や文字列の「完全一致」によって決まる
- シンプルで見通しの良い分岐を設計したい
IfとSwitchの違いを比較
| 比較項目 | If文 | Switch文 |
|---|---|---|
| 対応可能な条件 | 論理式、演算式、数式など柔軟 | 一致する具体的な値のみ |
| 条件数の柔軟性 | 無制限(Else Ifの追加で対応) | Caseで追加可能だが条件の複雑化には不向き |
| 使用シーン | 複雑な分岐、論理判断 | 単純な値の一致による分岐 |
| 読みやすさ | 条件が多くなると複雑化しやすい | パターンが明確で読みやすい |
数式や演算子の使い方
条件分岐の際に、比較演算子や論理演算子を使って柔軟な条件設定ができます。
主な比較演算子
| 演算子 | 意味 |
|---|---|
= | 等しい |
<> | 等しくない |
> | より大きい |
< | より小さい |
>= | 以上 |
<= | 以下 |
主な論理演算子
| 演算子 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|
AND | 両方の条件が成立する | A > 100 AND B < 50 |
OR | どちらかの条件が成立する | A = 1 OR A = 2 |
NOT | 条件が偽であること | NOT A = 5 |
こうした演算子はIf文の条件設定で特によく使われます。Switch文では、基本的にこうした論理式は使わず、「値の一致」による判断のみ行います。
実践的な使い分けのコツ
ケース1:メールの件名に応じて処理を分岐させたい
plaintextコピーする編集するIf 件名に「請求書」が含まれる
→ 請求書処理フローへ
Else If 件名に「見積もり」が含まれる
→ 見積もり処理フローへ
Else
→ その他の処理
→ If文が適切(条件が文字列の部分一致で論理的)
ケース2:ユーザーの選択に応じて処理を切り替えたい
plaintextコピーする編集するSwitch ユーザーの選択
Case "商品A"
→ Aの商品処理
Case "商品B"
→ Bの商品処理
→ Switch文が適切(完全一致での分岐が明確)
まとめ:IfとSwitchの使い分けを正しく理解しよう
Power Automate Desktopにおいて、条件分岐はフロー設計の基礎でありながら非常に重要な要素です。以下のように使い分けを意識することで、処理がわかりやすくなり、保守性も向上します。
- If文: 複雑な条件や複数条件を扱う場合に活用
- Switch文: 特定の値に基づく分岐を整理したい場合に活用
どちらのアクションも視覚的に構成できるので、設計前に「この条件はどれが適しているか?」と考えるクセをつけることが、効率的なフロー作成につながります。
おすすめの次ステップ
- 条件分岐を含むサンプルフローを実際に作成してみる
- 「条件の構文」や「変数の型」にも慣れておく
- 複雑な分岐になる場合は、一度フローチャートを描いてから設計する
コメント