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EDRとは?わかりやすく解説!アンチウイルスとの違いや導入が必要な理由【初心者向け徹底ガイド】

近年、ニュースで企業の個人情報漏洩や、システムを人質に取る「ランサムウェア」の被害を耳にする機会が増えましたね。テレワークが普及し、どこからでも仕事ができるようになった一方で、サイバー攻撃の手口も驚くほど巧妙になっています。

「うちはウイルス対策ソフトを入れているから大丈夫」

もしそう思われているとしたら、少し注意が必要かもしれません。実は、従来型のウイルス対策ソフトだけでは防ぎきれない攻撃が急増しているのです。そこで今、世界中の企業で導入が進んでいるのが「EDR(イー・ディー・アール)」という新しいセキュリティ技術です。

この記事では、セキュリティの専門知識がない方でも理解できるように、EDRの仕組みや、従来のアンチウイルス製品との違い、そしてなぜ今EDRが必要不可欠と言われているのかを、専門用語を噛み砕いて丁寧に解説していきます。企業のセキュリティ担当になったばかりの方や、経営者の方にとっても、今後の対策を考える上での羅針盤となるような内容を目指しました。ぜひ最後までお付き合いください。

目次

EDRとは何か?その基本概念

EDRは「Endpoint Detection and Response」の略称です。日本語に直訳すると「エンドポイントでの検出と対応」となります。これだけだと少し難しいですよね。言葉を分解して、一つずつイメージしてみましょう。

エンドポイント(Endpoint)とは、ネットワークの「末端」に接続されている機器のことを指します。具体的には、皆さんが普段業務で使っているパソコン、スマートフォン、タブレット、そしてサーバーなどがこれに当たります。

ディテクション(Detection)は「検出・発見」、レスポンス(Response)は「対応・反応」を意味します。

つまりEDRとは、「パソコンやサーバー(エンドポイント)の内部を常に監視し、怪しい動きがあれば即座に発見して、被害が広がる前に対処する仕組み」のことです。

監視カメラと警備員の関係

EDRの役割をイメージしやすくするために、建物の防犯対策に例えてみましょう。

従来のウイルス対策ソフトは、建物の「玄関の鍵」や「入館チェック」のようなものです。ブラックリストに載っている指名手配犯(既知のウイルス)が来たら、入り口でブロックしてくれます。しかし、変装した泥棒(未知のウイルス)や、正規の社員証を盗んだ侵入者(なりすまし)には弱く、一度中に入られてしまうと無力でした。

一方、EDRは建物の中に設置された「高性能な監視カメラ」と、そこ常駐する「警備員」のような役割を果たします。
たとえ入り口を突破されて侵入者が中に入ってきたとしても、「金庫室を無理やり開けようとしている」「夜中に不自然な動きをしている」といった不審な挙動をカメラ(EDR)が捉えます。そして、すぐに警備員(管理者やシステム)に知らせ、その不審者を取り押さえたり、部屋から追い出したりするのです。

「侵入されることを前提」として、侵入後の被害を最小限に抑える。これがEDRの最大のコンセプトです。

従来のアンチウイルス(EPP)とEDRの決定的な違い

これまで多くの企業で導入されてきたウイルス対策ソフトは、専門用語で「EPP(Endpoint Protection Platform)」と呼ばれます。EDRとEPPは、守るタイミングと目的が大きく異なります。

この違いを理解することが、EDR導入の第一歩です。以下の表にまとめてみました。

特徴EPP(従来型アンチウイルス)EDR(エンドポイント検出・対応)
主な目的「侵入を防ぐ」(予防)「侵入後の被害を防ぐ」(事後対処)
守るタイミングウイルスが侵入する「直前」ウイルスが侵入した「直後」~活動中
検知の方法既知のウイルスファイルの特徴と照合するファイルの「振る舞い(挙動)」を監視する
対象の脅威すでに世の中に知られているウイルス未知のウイルス、高度な標的型攻撃
発見後の対応ファイルを隔離・駆除して終わり侵入経路の特定、被害範囲の調査、遠隔遮断
例え玄関の鍵、門番監視カメラ、動体検知センサー

EPPは「水際対策」、EDRは「火災報知器」

EPPは、パソコンの中にウイルスが入ろうとした瞬間に「これは危険なファイルだ!」と判断して止めるのが仕事です。しかし、最近のサイバー攻撃は、毎日何十万という新種のウイルスを生み出しており、EPPのデータベース更新が追いつかないケースが増えています。また、ウイルスを使わずに、Windowsの標準機能を悪用して攻撃する「ファイルレス攻撃」という手口もあり、これらはEPPでは検知が非常に困難です。

そこでEDRの出番です。EDRは「侵入を防げなかった」場合を想定しています。
火事に例えるなら、EPPは「防火素材の壁(燃えにくくする)」であり、EDRは「火災報知器とスプリンクラー(火が出たらすぐ気付いて消す)」です。どちらか片方があれば良いというものではなく、両方を組み合わせることで、より強固なセキュリティ環境を作ることができるのです。

なぜ今、EDRが必要とされているのか?

数年前までは、EPP(アンチウイルスソフト)さえ入れておけば安心と言われていました。しかし、なぜ今になって急激にEDRの必要性が叫ばれるようになったのでしょうか。それには、社会環境の変化と攻撃の進化という、大きく分けて3つの理由があります。

1. 「境界型防御」の崩壊とテレワークの普及

かつての企業セキュリティは「社内は安全、社外は危険」という考え方に基づいていました。社内ネットワークとインターネットの間にファイアウォールという壁を築き、外部からの攻撃を防ぐ「境界型防御」が主流でした。

しかし、コロナ禍をきっかけにテレワークが急速に普及しました。社員は自宅やカフェからクラウドサービスにアクセスし、社外にあるパソコンで業務を行います。こうなると、守るべき「境界線」が曖昧になります。社外で感染したパソコンをVPNで社内に繋いだ瞬間、社内全体にウイルスが広まるといった事故も多発しました。

パソコン(エンドポイント)が社内になくても、どこにあろうと個別に監視し、守る必要が出てきたのです。これを「ゼロトラスト(何も信頼しない)」という考え方の一部として、EDRが重視されるようになりました。

2. サイバー攻撃の高度化・巧妙化

攻撃者もビジネスとしてサイバー攻撃を行っており、その手口は日々進化しています。

  • 未知のマルウェア(ウイルス): 従来のパターンマッチング(指名手配リストとの照合)では検知できない、新種のウイルスが次々と作られています。
  • ファイルレス攻撃: ウイルスファイルを保存せず、パソコンのメモリ上だけで動作したり、PowerShellなどの正規ツールを悪用したりする攻撃が増えています。これらは「悪いファイル」が存在しないため、従来のアンチウイルスでは見つけられません。
  • 潜伏活動: 侵入してすぐに暴れるのではなく、数ヶ月間ひっそりと社内ネットワークを偵察し、重要なデータを盗み出す準備をする攻撃もあります。

こうした「見えない攻撃」を可視化できるのがEDRなのです。

3. 被害発生時の説明責任(コンプライアンス)

万が一サイバー攻撃を受けて個人情報が漏洩した場合、企業には「何が起きたのか」「どの情報が漏れたのか」「原因は何か」を速やかに調査し、報告する義務が生じます(個人情報保護法の改正などにより、この責任はより重くなっています)。

従来のアンチウイルスソフトだけでは、「ウイルスを駆除しました」というログしか残らず、「結局、どんなデータが盗まれたのか?」までは分かりません。EDRがあれば、「いつ、どのパソコンから侵入し、どのファイルにアクセスし、どこへ通信したか」という操作ログが詳細に記録されています。これにより、迅速な原因究明と顧客への説明が可能になり、企業の信頼失墜を最小限に抑えることができます。

EDRの具体的な仕組みと機能

では、実際にEDRを導入すると、どのような動きをしてくれるのでしょうか。一般的なEDRの動作フローを4つのステップで解説します。

Step 1:ログの収集と監視(常に見ている)

EDRのエージェント(監視プログラム)を、社内の全パソコンやサーバーにインストールします。このエージェントは、パソコンの動作への影響を最小限に抑えつつ、ファイルの作成、通信の発生、プロセスの起動、レジストリの変更など、あらゆる挙動(ログ)を記録し続け、クラウド上の管理サーバーへ送信します。

Step 2:脅威の検知(異常を見つける)

集められた膨大なログを、AI(人工知能)や行動分析エンジンが解析します。「普段は使わないコマンドが実行された」「短時間に大量のファイルが暗号化され始めた(ランサムウェアの疑い)」「海外の不審なサーバーへ通信している」といった、通常とは異なる振る舞いを検知すると、管理者にアラート(警報)を通知します。

Step 3:封じ込めと隔離(被害を止める)

ここがEDRの真骨頂です。管理者は管理画面から、感染の疑いがあるパソコンをネットワークから遠隔で切り離すことができます。
物理的にLANケーブルを抜きに行かなくても、ワンクリックで隔離できるため、他のパソコンへの感染拡大(ラテラルムーブメント)を即座に阻止できます。隔離された状態でも、EDRの管理サーバーとの通信だけは維持されるため、調査は継続可能です。

Step 4:調査と復旧(原因を突き止め、元に戻す)

「どこから侵入したのか(感染経路)」「どのファイルが影響を受けたのか」を、記録されたログをもとに追跡調査します。これをフォレンジックと呼びます。原因を特定したら、悪意のあるプロセスを停止させたり、ファイルを削除したりして復旧作業を行います。製品によっては、ランサムウェアで暗号化されたファイルを、攻撃前の状態にロールバック(巻き戻し)できる機能を持つものもあります。

EDR導入のメリット

ここまでの説明でイメージが湧いてきたかと思いますが、改めてEDRを導入するメリットを整理してみましょう。

  • 「未知の脅威」に対抗できる:
    新種のウイルスや、ファイルレス攻撃など、従来のソフトではすり抜けてしまう攻撃を発見できます。
  • 被害を最小限に抑えられる:
    侵入を早期に発見し、即座にネットワークから隔離することで、全社的なシステム停止や大規模な情報漏洩を防げます。
  • 「何が起きたか」がわかる(可視化):
    ブラックボックスになりがちなパソコン内部の動きが見えるようになるため、万が一の際も根拠に基づいた説明と対応ができます。
  • テレワーク環境でも管理できる:
    社内ネットワークに繋がっていない自宅のパソコンでも、インターネットに繋がってさえいれば監視と制御が可能です。

EDRのデメリットと課題:導入前に知っておくべきこと

非常に強力なEDRですが、導入には注意点もあります。ここを理解せずに導入すると、「入れたけど使いこなせない」という事態に陥りかねません。

1. 運用には専門知識が必要

これが最大の課題です。EDRは「不審な挙動」を検知して通知してくれますが、その通知が「本当に危険な攻撃」なのか、「社員が業務で新しいソフトを入れただけの誤検知」なのかを判断するには、ある程度のセキュリティ知識が必要です。
アラートが鳴るたびにパニックになっていては業務が回りませんし、逆にアラートを放置しては意味がありません。ログを読み解き、適切な判断を下すスキルが求められます。

2. コストがかかる

従来のアンチウイルスソフト(EPP)に比べて、EDRは高機能である分、ライセンス費用が高額になる傾向があります。また、ログを保存するためのクラウドストレージ費用が含まれる場合もあります。

3. 過検知(誤検知)の対応

セキュリティレベルを高く設定しすぎると、通常の業務で行う操作まで「怪しい」と判断して止めてしまうことがあります。導入初期は、自社の業務に合わせたチューニング(調整)期間が必要です。

課題を解決する「MDR」という選択肢

「EDRが必要なのはわかったけど、うちには専任のセキュリティ担当者なんていないよ…」
そう思われた方も多いのではないでしょうか。日本企業の多く、特に中堅・中小企業では、ひとり情シスや兼任担当者が頑張っているのが現状です。

そこで注目されているのがMDR(Managed Detection and Response)というサービスです。

MDRとは、「EDRの運用を、セキュリティの専門家チームにアウトソーシング(外注)するサービス」のことです。
24時間365日体制で、セキュリティアナリストが企業の代わりにEDRのアラートを監視します。もし危険なアラートが出たら、アナリストが内容を分析し、「これは誤検知なので無視してOKです」や「緊急性が高いので端末を隔離しました」といった対応や報告をしてくれます。

  • EDR: 道具(監視カメラ)
  • MDR: 運用サービス(監視センターの警備員)

自社に専門家がいない場合は、「EDR製品 + MDRサービス」のセットで導入するのが、現在もっとも現実的で効果的な解決策となっています。

失敗しないEDR製品の選び方

市場には多くのEDR製品(CrowdStrike, SentinelOne, Microsoft Defender for Endpoint, Trend Microなど)があります。選定する際のポイントをいくつか挙げます。

  1. 検知精度の高さと誤検知の少なさ
    第三者機関の評価テスト(MITRE ATT&CKなど)の結果を参考にするのも良いでしょう。
  2. 管理画面の使いやすさ(日本語対応)
    いざという時に操作する画面です。直感的にわかるか、日本語に対応しているかは重要です。
  3. 動作の軽さ
    パソコンの動作が重くなって社員の生産性が落ちては本末転倒です。導入前にトライアル(PoC)を行い、動作の重さを確認しましょう。
  4. MDRサービスの有無
    自社運用が難しい場合、メーカーやベンダーが質の高いMDRサービスを提供しているかを確認しましょう。
  5. 既存のアンチウイルスとの共存
    現在使っているアンチウイルスソフトとセットになっている製品(EPP+EDR一体型)を選ぶと、管理が一本化できて楽になる場合があります。

まとめ:セキュリティは「侵入を防ぐ」から「侵入を前提に対処する」時代へ

最後までお読みいただき、ありがとうございます。EDRについて、少しイメージが掴めましたでしょうか?

今回の内容を簡単におさらいします。

  • EDRは「監視カメラ」: ウイルスの侵入後の動きを監視し、被害拡大を防ぐためのシステム。
  • EPP(アンチウイルス)とは役割が違う: 「予防」のEPPと、「事後対処」のEDR。これからは両輪で守る必要がある。
  • 背景には環境の変化: テレワークやサイバー攻撃の高度化により、従来の防御だけでは守りきれなくなった。
  • 運用課題にはMDR: 専門知識が必要な運用監視は、外部のプロ(MDR)に任せるのが安心。

セキュリティ対策は「これで終わり」というゴールがありません。攻撃者は常に新しい手口を考えてきます。しかし、EDRを導入することで、万が一攻撃を受けても「すぐに気付き、すぐに対処できる」という体制を整えることができます。これは、企業の大切な資産と信頼を守るための、非常に強力な保険となります。

「うちは小さい会社だから狙われない」ということは決してありません。サプライチェーン攻撃のように、大企業への踏み台として中小企業が狙われるケースも増えています。

まずは、自社の現在のセキュリティ状況を見直し、「もし今、ウイルスに侵入されたら気付けるだろうか?」と問いかけてみてください。その答えに不安を感じたら、EDRの導入を検討するタイミングかもしれません。この記事が、皆様の会社のセキュリティ強化の一助となれば幸いです。

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この記事を書いた人

ブログ運営者。日常の気づきから、言葉の意味、仕組みやトレンドまで「気になったことをわかりやすく」まとめています。調べて納得するのが好き。役立つ情報を、肩の力を抜いて発信中。

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