火おこしの道具として古くから使われてきた「チャークロス」。
ブッシュクラフトやサバイバル、キャンプの世界では定番ともいえる存在ですが、その仕組みや使い方を深く理解している人は意外と多くありません。
チャークロスはシンプルな素材から作れるうえ、着火能力が高く、災害時にも役立つ非常に合理的な道具です。
この記事では、チャークロスの基本、科学的な仕組み、作り方、使い方、保管方法まで丁寧に解説します。
初めてチャークロスを知る人でも、今日から使える知識と実践的なポイントをしっかり身につけられる内容になっています。
チャークロスとは?
チャークロス(char cloth)とは、綿や麻などの天然繊維を酸素の少ない状態で加熱して炭化させた素材のことです。
見た目は黒くて軽い布のようですが、火打ち石や火打ち金(ストライカー)で生じる「僅かな火花」でも簡単に着火するという特性を持っています。
簡単にいえば「布の形を保ったまま炭になったもの」であり、伝統的な火おこし道具として世界各地で利用されてきました。
チャークロスの主な特徴
- わずかな火花でも着火しやすい
- 軽くてかさばらない
- 素材が安価で、自作も簡単
- 湿気に弱いが、乾燥させれば再び使用可能
- 燃焼温度が低く、火種として扱いやすい
特にブッシュクラフトの世界では、ライターがなくても火が起こせる「原始的かつ確実な火種」として高い評価を受けています。
チャークロスが火花で着火する仕組み
チャークロスは普通の布と違ってなぜ火花だけで火がつくのでしょうか。
その理由は「乾留(かんりゅう)」という製造過程にあります。
乾留によって炭化した布
乾留とは、素材を空気を遮断した状態で加熱し、揮発成分を飛ばして炭素だけを残した状態にすることを指します。
炭が薪よりも着火しやすいように、チャークロスも炭化しているため、火花が触れただけで赤く燃え始めます。
比表面積が大きい
布繊維がそのままの形で炭化しているため、表面積が非常に広く、火花の微小な熱でも高温状態を維持しやすくなっています。
低温で炭火状態に移行
チャークロスは炎を上げて燃えるのではなく「じんわりと赤く発火」します。
この安定した火種が、フェザースティックや麻ひもなどの火口に火を移すのに最適です。
チャークロスに適した素材
チャークロスは天然繊維でなければ作ることができません。理由は、合成繊維は溶けたり有毒ガスを出したりして炭化しないからです。
チャークロスに向いている素材
- 綿(コットン)100%の布
- 麻(リネン、ジュート)
- 古いTシャツ、デニム生地(100%コットンに限る)
- 脱脂綿(コットンパフ)
おすすめは「厚手すぎず、薄手すぎないコットン布」。均一に炭化しやすく扱いやすいです。
チャークロスの作り方
チャークロスは家庭の道具で簡単に作れます。基本は「缶の中に布を入れ、空気を遮断した状態で加熱する」だけです。
用意するもの
- フタ付きの金属缶(お菓子の缶など)
- コットン布(使用済みTシャツでもOK)
- ガスコンロ・焚き火・固形燃料 など加熱源
- 針やキリ(缶に小さな穴をあけるため)
手順
1. 缶に小さな穴をあける
缶のフタか側面に小さな穴を一つ開けます。これは、布の加熱中に出るガスを逃すためのものです。
2. 布を適度な大きさに切る
3〜5cm角に切ると扱いやすく、燃え方も安定します。
3. 缶に布を入れ、フタをする
隙間を詰めすぎず、軽く入れる程度でOK。
4. 缶を火にかける
缶の穴から白い煙が出てくるのが特徴で、煙が止まるまで加熱を続けます。
5. 冷めるまで絶対に開けない
熱いうちにフタを開けると酸素が入り、布に火がついて燃え尽きてしまいます。完全に冷えてから開封しましょう。
蓋が明かないように注意しながらひっくり返して空気が入らないようにすると成功しやすいです。
6. 黒く均一に仕上がっていれば成功
布が割れやすい質感になり、全体が黒く炭化していれば完成です。
正しく燃えないチャークロスの原因と改善策
| 問題の症状 | 原因 | 改善策 |
|---|---|---|
| 中心部が茶色のまま | 加熱不足 | 再加熱する |
| ぼろぼろ崩れる | 加熱しすぎ | 加熱時間を短縮する |
| 火花で着火しない | 湿気を吸っている | しっかり乾燥させる |
| 片面だけ炭化 | 布を詰め込みすぎ | 余裕を持って配置 |
チャークロスは「適度に炭化すること」が重要なポイントです。
チャークロスの使い方
チャークロスは火打ち石を使った古典的な火おこしにとても相性が良いです。
1. チャークロスを火打ち金の上にのせる
ストライカー(金属片)の平らな部分にチャークロスを軽く触れさせます。
2. 火打ち石をこすって火花を落とす
火花がチャークロスに落ちると、赤くじんわりと光り始めます。
3. 火口に包んで息を吹きかける
チャークロスが赤くなり始めたら、麻ひもやティンダー(細かい火口)に包み込み、ゆっくり息を吹きかけて炎に育てます。
火口として使える素材例
- 麻ひもをほどいて作ったティンダーバードネスト
- コットンボール
- 樹皮(白樺など)
- 乾いた草・落ち葉
わずかな火花から火種を大きくできるので、「着火のきっかけづくり」に特化した使い方が最も効果的です。
チャークロスの保管方法
チャークロスは湿気を吸うと着火性が落ちるため、保管方法が重要です。
乾燥状態を保つコツ
- 密閉袋(ジッパー袋)に入れる
- 小さな防湿剤を同梱する
- 金属ケースに入れてキャンプセットに常備する
もし湿ってしまっても、日光やストーブのそばで乾かせば再び使えるようになります。
チャークロスのメリットとデメリット
メリット
- ライターやマッチがなくても火が起こせる
- 材料が安価で自作可能
- 災害時の備えになる
- 伝統技術として学ぶ価値がある
デメリット
- 湿気に弱い
- 取り扱いに慣れが必要
- 風の強い日や雨天では扱いづらい
とはいえ、正しく保管し、基礎を理解していれば非常に頼もしい火おこしアイテムになります。
チャークロスを使った火おこしが学べるシーン
近年、アウトドアブームの広がりとともに、チャークロスを用いた火おこしは「技術として学びたい」という人が増えています。
学習・活用できる場面
- ブッシュクラフト教室
- キャンプイベント
- 災害備蓄ワークショップ
- 子ども向け自然体験プログラム
特に災害時においては、電池や燃料に頼らず火を起こせる技術は強力な備えになります。
チャークロスは誰に向いている道具?
チャークロスは決してマニアだけの道具ではありません。
初心者にもおすすめできる理由
- 作り方が簡単
- 火おこしの仕組みが理解しやすい
- 道具が少なくて済む
- 安価で失敗してもダメージが小さい
キャンプを始めたばかりの人でも「自然の原理を楽しみながら火おこしできる」点が魅力的です。
チャークロスは小さくて頼れる火おこしの味方
チャークロスは、綿や麻を炭化させただけのシンプルな素材ですが、火花だけで着火するという非常に優れた機能を持っています。自作も簡単で、キャンプ・ブッシュクラフト・災害備蓄と幅広く活用できる万能ツールです。
火おこしの原理を理解し、自分の手で道具を作り扱う経験は、自然をより深く楽しむきっかけにもなります。ぜひ、チャークロスを実際に作って試し、アウトドアの幅を広げてみてください。

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