会議や資料で「この事業スキームは…」「新しいスキームを組みましょう」といった言い回しを聞いて、「結局スキームって何?」とモヤっとしたことはないでしょうか。
なんとなく「計画」っぽい意味だと分かっていても、いざ説明しようとすると意外と言葉にしづらい言葉です。
この記事では、「スキームとは何か?」を、ビジネス初心者の方にもわかるようにやさしく解説します。
一般的な意味から、ビジネス・IT・金融など分野ごとの使われ方、似た言葉との違い、実務での具体例、メールや会話での使い方まで、まとめて整理していきます。
スキームとは?基本の意味
まずは、いちばんベーシックな「スキーム」の意味から押さえておきましょう。
スキームの元々の意味
「スキーム(scheme)」は英語で、元々は次のような意味があります。
- 計画
- 構想
- 仕組み
- 枠組み
- 制度・制度設計
日本語でざっくり言うと、
「何かを実現するための 考え方の枠組み や 全体の仕組み」
と考えるとイメージしやすいです。
日本語に無理やり置き換えると?
状況によってニュアンスは変わりますが、日本語に言い換えるとしたら、こんな言葉が近いです。
- 計画
- 全体像
- 枠組み
- やり方の設計
- 仕組み
たとえばビジネスでよく聞く
- 「事業スキーム」=事業の全体的な仕組み・枠組み
- 「資金調達スキーム」=資金をどう集めるかの仕組み
- 「業務スキーム」=仕事の流れ・役割分担の設計
といった使い方をします。
ビジネスシーンでの「スキーム」の使われ方
仕事の場で「スキーム」という言葉が出てきたら、ほとんどの場合は英語本来の意味より狭く、「仕組み」「全体の設計」といったニュアンスで使われています。
よくある表現の例
ビジネスシーンでよく目にするのは、こんな表現です。
- 事業スキーム
- 販売スキーム
- 収益スキーム(収益化スキーム)
- 資金調達スキーム
- 業務スキーム
- 連携スキーム(他社・自治体との連携の仕組み)
- プロジェクトスキーム
これらはすべて「どういう仕組み・枠組みで動かすか」を指しています。
具体的に何を含むのか?
たとえば「新規事業のスキーム」と言うとき、単なるアイデアだけではなく、次のような要素をひとまとめにした「全体設計」を指すことが多いです。
- 誰が:関係者・ステークホルダー
- 何を:提供する商品・サービス
- 誰に:ターゲットとなる顧客
- どうやって:販売方法・チャネル・業務プロセス
- お金の流れ:売上・コスト・利益の仕組み
- 契約関係:どことどのような契約を結ぶか
- スケジュール:ざっくりした進め方・タイムライン
つまり「事業のスキーム」とは、
「その事業を成り立たせるための、関係者・お金・業務の流れを含めた全体の仕組み」
と考えると、かなり実務に近いイメージになります。
IT・Web分野での「スキーム」の意味
ITの世界では、「スキーム」は少し違う専門的な意味でも使われます。
URLの「スキーム」
IT分野で代表的なのが、「URLスキーム」という使い方です。
例)
https://example.commailto:info@example.com
この https や mailto の部分を「スキーム」と呼びます。
「このデータにはどういう方法でアクセスするか」という“通信方法の種類”のような意味です。
http/https:Webページ閲覧のためのスキームftp:ファイル転送のスキームmailto:メールを送るためのスキーム
「URLスキーム」と聞いたら、「URLの先頭についている https みたいな部分のこと」と理解しておけばOKです。
プログラミング言語としての「Scheme」
IT業界では、「Scheme(スキーム)」という名前のプログラミング言語もあります。
教育向け・研究向けによく使われる言語で、Lisp系の一種です。
ただし、日常のビジネス会話で「このスキームが〜」と言っているときに、このプログラミング言語を指すことはまずありません。
ITエンジニア同士の技術的な会話で出てくるくらいと考えてよいでしょう。
金融や行政での「スキーム」の意味
金融・行政・公共事業の分野でも、「スキーム」という言葉は頻繁に登場します。
金融スキーム
銀行や投資の世界では、
- 融資スキーム
- 投資スキーム
- プロジェクトファイナンスのスキーム
といった言い方がよく使われます。
ここでの「スキーム」は、
「お金の出し手・受け手・保証人などが、どのような契約関係で、どのような流れで資金を出し入れするか」
という「資金の流れの仕組み」を指します。
たとえば、大型不動産開発のスキームであれば、
- 銀行はどこか
- 出資者は誰か
- 返済はどこからどのように行うか
- リスクは誰がどこまで負うのか
といった関係を図にして整理したものが「スキーム図」としてまとめられます。
行政のスキーム
行政・自治体の資料などでは、
- 補助金スキーム
- 支援スキーム
- 公民連携(PPP・PFI)のスキーム
などという言葉が出てきます。
ここでの「スキーム」は、
「国・自治体・民間企業などがどのように役割分担をして、制度や事業を動かしていくかの枠組み」
という意味合いです。
「スキーム」と似た言葉との違い
日常的には「計画」「仕組み」「システム」などで言い換えられそうですが、「スキーム」との違いを整理しておくと、使い方がグッとクリアになります。
よく混同される言葉との比較
ざっくり比較すると、次のようなイメージです。
| 言葉 | ざっくりしたイメージ | ポイント |
|---|---|---|
| スキーム | 全体の枠組み・仕組み・構造 | 関係者・お金・情報の流れまで含むことが多い |
| プラン | 計画、案 | まだ形が固まっていないことも多い |
| 仕組み | ものごとが動くメカニズム | 日本語的で分かりやすい |
| システム | 仕組み、あるいは情報システム(IT) | ITの意味で使われることが多い |
| ストラクチャー | 構造、組み立て | 特に財務構造などで使われることがある |
ニュアンスの違いのイメージ
- 「新しい プラン を考えよう」
→ まだアイデアレベル。方向性を考える段階。 - 「この事業の スキーム を組み立てよう」
→ 誰が・何を・どうやって・お金はどう動くかまで含めて設計する段階。 - 「この システム を導入しよう」
→ 特定のITシステムや、仕組みそのものに焦点がある。 - 「この 仕組み は分かりにくい」
→ スキームを日本語でかみ砕いて言った表現。
ビジネスでは、「プラン → スキーム → 詳細設計 → 実行」と段階が進んでいくイメージを持っておくと分かりやすいです。
具体例でイメージする「スキーム」
言葉の説明だけだと分かったような分からないような…になりがちなので、もう少し具体例でイメージしてみましょう。
例1:サブスクサービスの「収益スキーム」
ある会社が月額サブスクの動画サービスを始めるとします。
そのときの「収益スキーム」は、例えばこんな感じになります。
- ユーザーは月額1,000円をクレジットカードで支払う
- クレジット決済手数料として3%が決済会社に支払われる
- 作品のライセンス料として売上の30%をコンテンツ提供会社に支払う
- 残りが自社の売上となる
- 広告視聴に応じて追加の広告収入が入る
これを図にして、
- ユーザー
- 自社
- 決済会社
- コンテンツ提供会社
- 広告主
の間で「お金がどう流れるか」を示したものが、いわゆる「収益スキーム」です。
例2:自治体と企業の連携スキーム
自治体と民間企業が一緒になって地域の観光プロモーションを行う場合の「連携スキーム」は、例えばこんなイメージです。
- 自治体:予算の一部負担、企画の承認、行政手続き
- 民間企業A:プロモーション企画・実行
- 民間企業B:ツアー商品を造成・販売
- メディア:広告枠の提供・情報発信
これらを「どこが主導するのか」「どの費用を誰が負担するのか」「成果指標をどこで持つのか」といった観点で整理したものが、「連携スキーム」と呼ばれます。
例3:社内業務の「業務スキーム」
社内の経費精算のやり方を見直すとき、「業務スキーム」として整理すると、例えばこんな流れになります。
- 社員がスマホアプリで領収書を撮影し、申請を登録
- 上司がアプリ上で承認
- 経理部が内容を確認し、会計ソフトへ自動連携
- 月末にまとめて振込処理を実行
この流れを「誰が・どのタイミングで・どんなツールを使って・どの情報を処理するか」まで含めて設計したものが、「業務スキーム」です。
「スキームを作る」とは何をすることか?
では、「スキームを作る」と言われたら、具体的にどんな作業をすることになるのでしょうか。
ステップ1:目的をはっきりさせる
まずは、「スキームを作る目的」を明確にします。
- どんな課題を解決したいのか
- 何を実現したいのか
- 成功した状態はどうなっているのか
ここが曖昧だと、スキームもぼやけてしまいます。
ステップ2:関係者を洗い出す
次に、その取り組みに関わる人・組織を整理します。
- 自社のどの部署が関わるか
- 社外のどんなパートナー・取引先が関わるか
- 顧客・利用者は誰か
これらを一覧にしておくと、後で「役割分担」や「情報・お金の流れ」を整理しやすくなります。
ステップ3:お金・情報・モノの流れを書き出す
スキームのコアになるのが、「何がどう流れるか」の設計です。
- お金の流れ
- どこからお金が入り
- 誰にどれだけ支払われ
- 最終的にどれくらいの利益が残るのか
- 情報の流れ
- どのタイミングで、誰に、どんな情報が渡るのか
- システム間の連携はどうするのか
- モノの流れ(物販などの場合)
- 在庫はどこに置き
- どこから出荷し
- 返品はどう扱うのか
これを紙やホワイトボード、スライドなどで図にしていきます。
ステップ4:役割分担・責任範囲を決める
関係者ごとに、
- どの部分を担当するのか
- 最終的な責任を誰が持つのか
- どの部分で決裁が必要なのか
を整理します。
ここまで整理できて初めて、「しっかりしたスキームができた」と言えるイメージです。
ステップ5:簡単なスケジュールに落とし込む
最後に、そのスキームを実際に動かすためのざっくりしたスケジュールを考えます。
- いつからスタートするのか
- どの時点で何を終えておくべきか
- どこで効果検証を行うか
ここまで含めて「スキーム」と呼ばれることもよくあります。
「スキーム」という言葉を使うときの注意点
便利な言葉ではありますが、なんでもかんでも「スキーム」と言えばよいわけではありません。いくつか注意点があります。
日常会話では少しカタめの言葉
「スキーム」はビジネス寄りのカタい言葉なので、日常会話やカジュアルな場面で多用すると、少し堅苦しく感じられることがあります。
- ×「今度の飲み会のスキームどうする?」
- ○「今度の飲み会の段取りどうする?」
仕事の中でも、相手や場面によっては「仕組み」「全体像」「流れ」など、より素朴な日本語に言い換えた方が伝わりやすいことも多いです。
中身がないのに「スキーム」と言わない
「とりあえずカッコいいから」といって、中身がまだ何も決まっていない段階から「スキーム」と呼んでしまうと、聞き手を混乱させてしまいます。
- アイデアが出てきた段階:
→ 「構想」「アイデア」「プラン案」などが適切 - 関係者・役割・お金の流れなどまで整理できた段階:
→ 「スキーム」と呼ぶとしっくりくる
という感覚を持っておくと、言葉の精度が上がります。
「スキーム図」で見せると伝わりやすい
スキームは「全体の仕組み」なので、文章だけで説明するよりも、図にする方が圧倒的に伝わりやすくなります。
- 四角で「関係者」や「部署」を描く
- 矢印で「お金」「情報」「モノ」の流れを示す
- 金額や役割を簡単にメモ書きする
といった「スキーム図」を作ることで、会議や提案の理解がスムーズに進みます。
メールや会話での「スキーム」の使い方例
実際のビジネスシーンでどのように使えばよいか、メールや会話の例文をいくつか挙げてみます。
メールの例文
- 「新規サービスの収益スキーム案を添付いたしました。ご確認をお願いいたします。」
- 「自治体との連携スキームについて、A案・B案の2パターンを作成しました。」
- 「本案件の資金調達スキームを再検討する必要があると考えております。」
- 「添付のスキーム図をご覧いただき、役割分担に問題がないかご確認ください。」
会話の例文
- 「このビジネスモデル、スキームがまだ整理しきれていないですね。」
- 「一度スキームを図に起こして、関係者間で認識を合わせましょう。」
- 「そのスキームだと、リスクが御社側に偏りすぎるかもしれません。」
- 「スキーム自体は良いと思うので、細かいオペレーションを詰めていきましょう。」
こうした言い回しをいくつか頭に入れておくと、会議や資料でも自然に使いやすくなります。
まとめ:「スキーム」とは“全体の仕組み・枠組み”を示す言葉
最後に、この記事のポイントをまとめます。
- 「スキーム(scheme)」は、もともと「計画」「構想」「仕組み」「枠組み」といった意味の英単語
- 日本のビジネス現場では、
→ 「関係者・お金・情報の流れまで含めた 全体の仕組み・枠組み」
を指して使われることが多い - 主な使われ方の例
- 事業スキーム
- 収益スキーム
- 資金調達スキーム
- 業務スキーム
- 連携スキーム など
- ITでは
- URLの
httpsなどの「スキーム」 - プログラミング言語「Scheme」
といった専門的な意味でも使われる
- URLの
- 「プラン」より、もう一歩踏み込んだ「全体設計」というニュアンス
- 中身が伴っていない段階では多用せず、
- 関係者
- お金・情報・モノの流れ
- 役割分担
などが整理された「全体像」に対して使うと、言葉の精度が上がる
「スキーム」という言葉のイメージさえつかんでしまえば、会議や資料で出てきても戸惑わなくなりますし、自分からも自然に使えるようになります。
まずは「スキーム=全体の仕組み・枠組み」という感覚を押さえておいてください。
コメント