結婚制度は人類の歴史の中で大きく変化してきました。かつては家と家の結びつきを重視する「制度」としての役割が強かった結婚ですが、20世紀以降は「個人の幸福」や「自己実現」といった価値観が重要視されるようになり、その中で生まれた概念がオープンマリッジです。ここでは、オープンマリッジがどのような歴史的背景を持ち、どのように広がってきたのかを整理してみましょう。
伝統的な結婚観とその変化
歴史的に見ると、結婚は「愛」よりも「家」や「社会制度」を維持するための仕組みでした。たとえば封建時代の日本やヨーロッパでは、結婚は家柄や財産、血統を守るために行われるのが一般的でした。恋愛結婚が主流となったのは比較的近代に入ってからです。
20世紀前半までは「結婚=一夫一婦制」が当然とされていましたが、第二次世界大戦後、欧米を中心に「個人の自由」や「男女平等」といった価値観が広がる中で、結婚の形にも疑問が投げかけられるようになりました。
1970年代アメリカでの誕生
オープンマリッジという言葉が広く知られるようになったのは、1972年にアメリカの社会学者ジョージ・オニールとニーナ・オニール夫妻が出版した著書『Open Marriage』によってです。
この本では「結婚生活を閉ざされたものにせず、外の世界ともつながりを持ちながら、自分自身を成長させていくべきだ」という思想が提唱されました。実際には性的自由だけでなく、仕事や友情、趣味など多方面での自由を尊重することを意味していましたが、メディアでは特に「性的自由」の部分が注目され、オープンマリッジ=性の解放というイメージが広まりました。
この時代背景には、1960年代後半から1970年代にかけての「セクシュアル・リベレーション(性の解放運動)」があります。避妊技術の普及やウーマンリブ運動の高まりが、結婚制度に対する価値観の変化を後押ししたのです。
欧米での広がりと変化
1970年代以降、欧米の一部ではオープンマリッジを実践する夫婦が登場し、メディアや学術的研究でも取り上げられるようになりました。ただし、社会全体で広く受け入れられたわけではなく、実践者は少数派にとどまりました。
その後、1990年代以降になると「ポリアモリー(複数恋愛)」や「スウィンガー文化」など、さまざまな非一夫一婦的な関係性が再び注目されるようになり、その中でオープンマリッジも再評価されていきました。インターネットの普及により、同じ価値観を持つ人が出会いやすくなったことも影響しています。
日本における受容と課題
日本では長らく「結婚=一夫一婦」「浮気=裏切り」という価値観が強く、オープンマリッジのような概念はほとんど知られていませんでした。しかし、2000年代以降、海外の情報が入りやすくなり、多様なライフスタイルを受け入れる風潮も少しずつ広がったことで、オープンマリッジという言葉が紹介される機会が増えてきました。
それでもまだ実践者はごく少数であり、社会的な偏見も強く残っています。特に日本の婚姻制度は法的に一夫一婦制を前提としているため、オープンマリッジはあくまで「夫婦間の合意による生き方」として存在しているのが現状です。
現代における位置づけ
現代のオープンマリッジは、「性的自由」だけでなく「夫婦がお互いの生き方を尊重する」という意味合いで語られることが増えています。特に欧米の若い世代の中では「結婚のかたちは一つではない」という価値観が広がっており、オープンマリッジやポリアモリーを選択する人も一定数存在します。
また、SNSやマッチングアプリを通じて、同じ価値観を持つ人同士がつながりやすくなったことも、こうした関係性が広がる背景となっています。
まとめ
オープンマリッジは1970年代のアメリカで誕生し、性の解放や個人の自由を求める時代背景の中で広がりました。その根底には「結婚を閉じられた関係ではなく、成長と自由を尊重する場にする」という思想があります。
現代においては、必ずしも性的自由に限定されず、夫婦それぞれが自分らしく生きるための一つの選択肢として存在しています。日本ではまだまだ馴染みの薄い概念ですが、結婚観が多様化する今後、注目され続けるテーマであることは間違いありません。

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