パソコンやスマートフォンを使っていると、容量の単位で「GB(ギガバイト)」や「MB(メガバイト)」という言葉をよく見かけます。しかし、細かく調べてみると「1GB=1024MB」と説明される一方、メーカーやストレージの宣伝では「1000GB=1TB(テラバイト)」といった表記も多く見られます。なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?また、実際にどれくらいの誤差が発生し、どのような影響があるのかについても解説します。
コンピュータの世界で使われる容量の単位
コンピュータの容量を表す際、よく使われる単位には以下のものがあります。
- KB(キロバイト)
- MB(メガバイト)
- GB(ギガバイト)
- TB(テラバイト)
それぞれ、次の単位に「何倍」で進んでいくのかがポイントです。
2進法と10進法の違い
2進法(バイナリ)
コンピュータの基本は2進法です。メモリや記憶装置の内部では、すべて「0」と「1」で情報を処理しています。そのため、容量も「2のn乗」で数えられることが伝統的です。
- 1KB = 1024B(バイト)
- 1MB = 1024KB
- 1GB = 1024MB
- 1TB = 1024GB
10進法(SI接頭辞)
一方、日常的な計量法や、メーカーの宣伝や仕様書などでは、国際単位系(SI接頭辞)を基準にしています。
- 1KB = 1000B
- 1MB = 1000KB
- 1GB = 1000MB
- 1TB = 1000GB
つまり、2進法では「1024」ごと、10進法では「1000」ごとに単位が変わります。この違いが混乱の原因です。
なぜこの違いが生まれたのか
コンピュータの発展とともに
もともとコンピュータの記憶容量は、2進法に合わせて「1024」単位で扱われてきました。たとえば、1KBは1024バイト、1MBは1024×1024バイト(=1,048,576バイト)というふうに計算されます。
しかし、記憶装置(ハードディスクやSSDなど)を販売する際、メーカーはより大きな数字を使う方が製品が「お得」に見えるため、SI単位系(1000単位)で表記するようになりました。これが「1GB=1000MB」の理由です。
国際的な取り決め
混乱を避けるため、国際電気標準会議(IEC)は1998年、2進法の容量には「KiB」「MiB」「GiB」「TiB」などの新しい単位名(キビバイト、メビバイト、ギビバイト、テビバイト)を導入しました。
- 1KiB = 1024B
- 1MiB = 1024KiB
- 1GiB = 1024MiB
- 1TiB = 1024GiB
ただし、この新しい単位はまだ一般にはあまり普及していません。パソコンやスマートフォンの画面やパッケージには、今も「GB」「MB」がそのまま使われていることが多いです。
実際にはどれくらいの誤差になるのか?
それでは、具体的に「1000単位」と「1024単位」でどれくらい誤差が生まれるのかを計算してみましょう。
1GBの定義の違い
表記 | バイト数 |
---|---|
1GB(SI) | 1,000,000,000 バイト |
1GB(2進法) | 1,073,741,824 バイト |
実際、パソコンの容量表示(Windowsなど)は「2進法」で計算していますが、メーカーのパッケージや広告は「10進法(SI)」を使っているケースが多いです。
1TBで考えると
たとえば、1TBのHDDを購入した場合、メーカーは「1TB=1,000,000,000,000バイト」としている場合がほとんどです。
しかし、OS側は「1TB=1,099,511,627,776バイト(1024GB)」として計算します。
- メーカー表記(10進法):1,000,000,000,000バイト ÷ 1,073,741,824バイト(=1GB 2進法) ≒ 931GB
- OS表示(2進法):1,000GB(10進法)÷ 1.073741824 ≒ 931GB
つまり、1TBのHDDを買っても、パソコン上では約931GBと表示されるのは、この計算方法の違いが原因です。
誤差の大きさ
単位が大きくなるほど、誤差も大きくなります。
容量(SI基準) | 実際の2進法表示 | 差分(GB) | 誤差率(%) |
---|---|---|---|
1GB | 0.931GB | 0.069GB | 約6.9% |
10GB | 9.31GB | 0.69GB | 約6.9% |
100GB | 93.1GB | 6.9GB | 約6.9% |
1000GB | 931GB | 69GB | 約6.9% |
1TB | 931GB | 69GB | 約6.9% |
たとえば、1TBのハードディスクを買うと、約7%分、容量が「少なく見える」ということになります。
この誤差がもたらす影響
一般ユーザーへの影響
日常的に使う分には、多少の容量の差はあまり気にならないかもしれません。しかし、写真や動画、大容量ファイルを扱う場合、あるいは容量ぎりぎりまでデータを保存しようとした場合には、この誤差が無視できない場合もあります。
例えば:
- 1TBの外付けHDDにバックアップを取るつもりだったが、実際は931GBしか保存できなかった
- クラウドストレージのプランでも、表記よりも実際に使える容量が少なかった
ビジネスやシステム管理での影響
サーバーやストレージを大量に運用する企業では、この7%の誤差が大きな問題となることがあります。たとえば、100TB規模のストレージを導入した場合、実際には約93.1TB分しか保存できない計算です。
そのため、システム設計や運用時には、この容量差を見越してストレージを選ぶ必要があります。
実際の現場での対策と注意点
1. 表記の違いに注意する
ハードディスクやSSD、USBメモリなどのストレージを購入する際は、メーカーの「○○GB」「○○TB」という表記が「10進法(SI)」なのか「2進法」なのか、商品説明をよく確認しましょう。
2. バックアップやデータ移行時の計算に気を付ける
外付けストレージやクラウドストレージにデータを保存する際は、「表示容量よりも実際に使える容量が少ない」ことを前提に計画を立てると安心です。
3. 大容量を扱う場合はギビバイト(GiB)にも注目
特にビジネス用途やサーバー管理の場合は、「GiB」「TiB」といった2進法単位での表記や管理を推奨するケースが増えています。
まとめ
「1GB=1024MB」なのに、なぜ「1000GB=1TB」として計算されるのか――その理由は、コンピュータの仕組み(2進法)と、日常的な国際単位系(10進法)が混在して使われているからです。そのため、実際に使える容量とパッケージ表記の間には約7%の誤差が生じることになります。
この誤差は、容量が大きくなればなるほど無視できなくなります。特に大容量データを扱う方やシステム管理を行う方は、こうした違いをしっかり把握しておくことが大切です。
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